あさひ総合病院 内科医師 渡辺 哲郎
春はホタルイカが旬を迎える季節です。酢味噌和えや刺身などで楽しまれる方も多いでしょう。たっぷりのオリーブオイルでニンニクとともに煮込むアヒージョも、また乙なものです。
しかし注意が必要です。生や加熱が不十分なホタルイカを食べると、「旋尾線虫(せんびせんちゅう)」という寄生虫が、胃腸や皮膚に病気を引き起こすことがあります(これを旋尾線虫症といいます)。旋尾線虫が体内に寄生すると、激しい胃痛が起こり、嘔気や嘔吐を伴うことがあります。症状は食後数時間から数日で現れ、ときには腸閉塞を引き起こすこともあります。また、食後2週間前後に、線状の皮膚炎が現れることもあります。これは、旋尾線虫が皮膚に侵入し、這い回ることによるものです。
旋尾線虫症を防ぐため、刺し身など生で食べる場合は内臓を除去し、加熱する際は沸騰水に30秒以上入れるか、中心温度を60℃以上に保つ必要があります。冷凍処理には-30℃で4日間以上が推奨されています。家庭用冷凍庫の温度は-18℃程度のため、十分な処理となりません。生きたまま食べる「踊り食い」は控えておきましょう。正しい調理法を心がけ、旬の味を安全に楽しみたいものです。
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